堂島川にゆらゆらうつる町のひかりを、ぼんやり眺めていたら、酔いそうになった。
顔をあげると通りを歩くひとたちが、携帯のカメラでなにやら撮影している。その方向を見ると、空の低い位置におおきな月がでていた。
そういえば、きょうは月蝕だ。だけど、見上げたときはまだ、まるい月だった。
本屋で新書を3冊購入して、東梅田まで歩いて地下鉄谷町線に乗る。谷町九丁目に着いて、上本町のマクドナルドで本を読む。
頭の悪そうな高校生がたくさん、宿題をしていた。隣に座る女の子も漢文を。
しかし、マクドナルドに来たのはひさしぶり。珈琲が値段のわりにまずくないのに驚く。
すこし前までは、胃が痛くなるくらい、深煎りの濃い珈琲を好んで飲んでいたけれど、最近はそういうのは駄目だ。年のせいか。
篠つく雨、
そんな言葉がはじまる文章を読んでいたけど、上本町のマクドナルドの喧噪が、正確に言えば、隣の席の女子高校生のおしゃべりが、侵入してきて、なんだかなという感じだった。
そういう時は、眼鏡をはずして、本を近くに持ってくる。マクドナルドにいるひとびとはぼんやりとしか視界に入らず、そうしていると、彼らが話す言葉も聞こえなくなる。
いつのまにか、雨の降るミラノにいた。
マクドナルドを出て、欠けた月を探したが、空にはなにもなかった。
せめて雨でも降っていればいいのに、とおもいつつ、ラブホテルのピンク色のネオンを眺めながら家に帰った。